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先日の記事で、アメリカでの起業では、個人での場合でも、フリーランスではなく会社形態とした方が良い理由についてご紹介しました(記事はこちらからご覧ください)。

アメリカの会社形態はいくつかありますが、一番設立が容易で長期的に見て費用面でも手ごろなのは、LLCという形態です。今回は、LLC設立の流れについて見ていきたいと思います(アメリカは州ごとに法律が異なるため、LLC設立のプロセスも州ごとに変わってきます。今回はNY州を例にしました)。

それでは、ステップごとに順を追って、見てみましょう。


1. 会社名の決定
会社設立の最初のステップは、社名の選定です。希望の会社名が決まったら、他社が既に使っている社名でないかを下記のニューヨーク州のデータベースで確認します。

LLCの場合、会社名にLimited Liability Companyまたは、省略形のL.L.C.またはLLCを付けなければいけませんが、LLC が最も一般的です。なお、ビジネス上は、州への届け出を別途行うことで、Doing Business as(DBA)として、正式な名称とは異なる名前で事業を行うことが可能です。

2. 会社設立公告の新聞への掲載の準備
ニューヨーク州で会社を設立する際には、日刊新聞と週刊新聞1紙ずつに、会社の設立の公告を週に1度、6週間連続で掲載する必要があります。LLCが承認されてから120日以内の掲載が必要です。

ポイント
LLCの設立書類に記載する会社の住所により、公告を出す郡(County)が決まります。会社の所在地をマンハッタンにしたい人は多いと思いますが、公告費用はCountyによって大きく異なり、マンハッタンの公告費用は高いです。会社の住所は、実際の住所でなく郵便物を受け取る住所であれば良いため、公告費用を抑えたい場合は、費用が安いアルバニーにあるRegistered agent(登録代理人)を雇い、Registered agentの住所を会社の所在地としてアルバニーで公告を出し、後日住所をマンハッタンに変更します。1ステップ追加の手間がかかり、住所変更届で$30必要ですが、これにより、公告費用を数万円は節約できるでしょう。なお、住所をマンハッタンに写した際にマンハッタンで公告の再掲載はいりません。

Registered agent(登録代理人)としては、Northwest Registered Agentが有名で、その住所への郵便物は電子メールで転送してくれるなど、しっかりしたサービスで知られています。

3. 会社の登録
LLCの会社登録は、New York Division of Corporationsに定款(Articles of Organization)を提出することでなされます。

定款の提出はオンラインと郵送のどちらでもでき、申請費用はいずれも$200ですが、迅速で簡便な手続きのためには下記リンクからのオンラインでの提出がおすすめです

https://www.businessexpress.ny.gov/app/answers/cms/a_id/2443/kw/domestic%20LLC

上記ページからApply Online as an ownerというボタンをクリックし、まだNY.gov Business Accountがない場合には、Register Hereをクリックしてアカウントを作成し、LLCの登録へと進みます。

定款内で、LLCの運営形態について、Member-managedまたはManager-managedのどちらかを選ぶことができます。選ばなかった場合には、Operating Agreement(次のステップ参照)内でどちらの形態かを明記することとなります。

LLCでは出資者ひとりひとりはmemberとされ、memberの合議で経営を行う場合にはMember-managedのLLCとなります。一方、memberたちから選任されたmanagerが経営を担う場合は、manager-managed LLCです。一般的に、スタートアップや少人数でのLLC設立の場合にはmember-managed LLC、出資者が多い場合にはmanager-managed LLCとなります。

ポイント
LLCの設立日は登録の際に選ぶことができ、選ばなかった場合には登録が承認された日が設立日となります。年の後半に本ステップを行っている場合には、設立日を翌年の1月1日とすることで、その前年の確定申告書の提出が不要となります。

4. Operating Agreementの作成
ニューヨーク州のLLCには、Article of Organizationの届け出後90日以内にOperating Agreementの作成が義務付けられています。member-managed LLCとmanager-managed LLCで多少フォームが異なりますが、インターネット上で入手できるフォームをカスタマイズすることで、最初から作成する手間を省くことができます。

下記は、それぞれのLLCの形態での無料のテンプレートですので、適宜変更してご利用ください。

Member-managed LLC Operating Agreement 
Manager-managed LLC Operating Agreement

Operating agreementは、メンバー間の書面での契約としての役割を持っていますので、LLCとしての基本的な情報を含める必要があり、下記の情報は必須となっています。
・社名
・設立年月日
・(もしあれば)New York州のRegistered Agentの名前
・LLCの目的
・LLCの存続期間
・LLCが課税される方法

LLCのメンバーが複数人の場合は、各人のLLCの保有比率の記載も必要です。

Operating Agreementには設立時の各人の出資額も記載します。この時点でLLCの銀行口座が未開設で出資がなされていない場合には、出資予定額を記載します。

Operating Agreementの作成は必須ですが、州への登録義務はありません。作成後、LLCのメンバー全員にコピーを渡しましょう。

5. EIN番号の取得
EIN番号は、Employer Identification Numberの略称で、法人税を管轄しているIRS(米国内国歳入庁)により各会社に付与される固有の番号です。この番号により納税状況が管理され、事業経営において免許等必要な場合にも、EIN番号の提示が求められます。

SSNやITIN番号を持っている人は、下記のリンクからオンラインで申請を行います。
https://www.irs.gov/businesses/small-businesses-self-employed/apply-for-an-employer-identification-number-ein-online

SSNやITIN番号を持っていない人は、フォームSS-4を郵送またはファックスでIRS
へ提出します。
https://www.irs.gov/pub/irs-pdf/fss4.pdf

6. 会社設立公告の新聞への掲載
公告には社名、住所、設立年月日を記載します。

ステップ2でおすすめしたアルバニーで公告を掲載する場合には、週刊のThe Altamont Enterprise、日刊のTimes Unionの2紙への掲載となります。

公告は、費用を節約するために、文字数もコンパクトで要点を絞ったものとします。下記は広告の一例です。

ABC LLC Filed with SSNY on X/X/2022. Office: Albany County. SSNY designated as agent for process & shall mail copy to: XXXXXX (registered agentの住所) Purpose: Any lawful.

6週連続での公告掲載が終わったら、それぞれの新聞社から公告掲載完了証明としてAffidavidを受領します。

7. Certificate of Publicationの提出
公告掲載が終わったら、Department of StateへCertificate of Publicationの提出が必要です。それぞれの新聞社からのAffidavidのコピー、実際の公告のコピー、Department of State宛ての小切手$50を以下へ郵送します。

Department of State
Division of Corporations
One Commerce Plaza
99 Washington Avenue, Suite 600
Albany, NY 12231

これでLLC設立のステップは全て完了です。

なお、公告費用削減のために、公告費用が安い郡で公告を出した後にLLCの住所を変更する場合(ステップ2参照)には、州へ住所変更届を提出し、本来の住所を申請する必要があります。

オフィスを借りている場合はそちらが変更後の住所となります。LLCの住所は公に開示がなされますので、ホームオフィスで自宅の住所が公開されることを避けたい場合には、住所を貸してくれる会社と契約を行い、そちらを会社の住所とします(実際のオフィススペースなしでの住所のみの場合には、郵便物が届いたときにスキャンしてメールをしてくれるこちらのようなバーチャルオフィスのサービスが良心的な値段でおすすめです)

住所変更は、Certificate of Changeを申請費用の$30の小切手とともに、下記へ送付します。

Department of State
Division of Corporations
One Commerce Plaza
99 Washington Avenue
Albany, NY 12231

また、ニューヨーク州のLLCは2年に一度Biennial Statement(https://www.businessexpress.ny.gov/app/answers/cms/a_id/3427)が必要ですので忘れないようにしましょう。

次の記事では、銀行口座開設など、LLC設立後の諸手続きについてまとめていきます。

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